ゲンジボタルの発生(2015年)

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 ゲンジボタルの発生が、九州をはじめとした西日本の各地で始まっている。関東地方におけるゲンジボタルの自然発生地では、千葉県が早く、袖ケ浦市では、既に一週間ほど前から羽化した成虫が飛び始めており、昨年も訪れた生息地に行ってみた。
 昨年は、「ゲンジボタル(袖ヶ浦)」で掲載したように、水田の脇を流れるコンクリート護岸の農業用水路で多数の成虫が見られたが、今年は、飛翔の場所が昨年と異なっており、農業用水路が最終的に流れ込む河川本流との合流付近にまとまって見られた。
 農業用水路の両側は綺麗に草刈りがされていたために、成虫の隠れ場所と暗がりが減少し、更には風当たりが強くなっていた。一方、本流との合流付近は、片岸は竹と樹木が茂っており、草刈りもほとんどされていない。また畔から川面までは4m以上もあるため、広く暗い、風も弱い空間となっていた。この日の夜の天候は薄雲りで、月齢4.9。気温は20℃。開けた南西の方角から、時折り、風速3Mほどの風が吹く状況であり、ホタルの飛翔活動に適した無風で蒸し暑いという条件ではなかったが、こうした空間においては、多くのゲンジボタルが飛翔する。
 観察と撮影に訪れた生息地は、コンクリート護岸の農業用水路でも、条件が満たされればゲンジボタルが生息できることを教えてくれた場所であるが、今回のように、近くに飛翔できる空間がなければ生息はできないであろう。なぜなら、飛翔空間=雌雄の出会いの場 であるからだ。2週間ほどの発生期間の中でも、天候によって繁殖行動ができる日は、多くはない。更に飛翔空間=雌雄の出会いの場 が無くなれば、存続は難しくなる。
(ちなみに、交尾を終えたメスは、深夜になると農業用水路を上流に向かって飛び、産卵に適した場所を見つけて産卵する。)

 ゲンジボタルの発生は、幼虫の上陸時期とその後の温度によって決定される。水中で過ごした幼虫は、蛹になるために上陸するが、この時期は地域によってそれぞれ決まっており、また雨が降っている夜間に限られる。上陸後は、地中温度の積算で羽化する日数が決まっている。
参照:ホタルの発生に及ぼす温暖化の影響について(発育零点8.02℃、有効積算温度408.4日度)
つまり、上陸時期になっても雨が降らなければ、上陸時期が遅くなったり、或いは上陸する幼虫の数が減り、また、上陸後に寒い日が続けば、羽化までに日数を要したり、死んでしまって数が減るという影響がある。
 千葉県の生息地における上陸時期は、3月下旬~4月上旬頃で、気象データと照らし合わせると、ほぼ計算通りに順調に発生したと言える。勝浦市の生息地では、そろそろ羽化が始まり、6月上旬頃が発生のピークになると思われる。
 一方、東京都内の生息地におけるゲンジボタル幼虫の上陸時期は、例年5月の上旬頃であるが、今年は雨が降らず12日に上陸している。(ただし、人工飼育した幼虫を春先に放流している場所では、自生地よりも早い時期に上陸する。これは、幼虫の体内時計に狂いが生じているためと考えられる。)
 都内の生息地での発生は、今後の地中温度(1日の平均気温)の変化にもよるが、仮に現在の20℃が推移すれば、市街地に近い生息地では、6月15日頃から発生し、20日頃がピークで、短期間にまとまった発生になると思われる。市街地よりも気温の低い山間部では、6月下旬頃から発生が始まり、七夕頃がピークになると思われる。いずれも、発生時期は概ね例年通りと予想している。

 掲載したホタルの写真は、1秒ごとに9秒間の露光をした画像を幾つも重ね合わせるという処理をしたもの。1秒というタイムラグがあるため、写真における時間的芸術価値やホタルの生態学的価値はない、見栄えだけを重視したデジタル写真である。しかしながら、東日本型ゲンジボタルの中で、勝浦市同様に千葉県に生息する個体群の発光と飛翔の特徴が分かる。

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ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4(9秒×15 多重露光) ISO 400 (撮影地:千葉県袖ケ浦市 2015.5.23)

IMG_3645.jpg

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4(9秒×88 多重露光) ISO 400 (撮影地:千葉県袖ケ浦市 2015.5.23)

コメント(4)

いよいよ蛍の季節になりましたね。
今年は雨が少なく気候が不順なので
ホタルの発生は順調なのかちょっと心配です。
実際に見に行けないのでこちらで見せて頂くのを
楽しみにしています。

こんにちは。もうホタルの季節が始まっているんですね。ホタルさんもお忙しくなりますね。

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