ホタル百科事典ホタルの飼育と観察日誌

東京にそだつホタル

ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2003年5月-2)

2003年5月13日

ゲンジボタルの幼虫の上陸は、5月4日と12日にとても多くなっているが、昨日12日の場合は、最高最低気温の差が5℃で他の日に比べて少ないが、4日はかなり開きがある。上陸初日のような明確な気象との関係は見いだせない。何故5月4日に多く上陸したか?

本日も昨日同様に足水と霧吹きを行ったが、上陸はゼロである。

2003年5月14日

ゲンジボタルの幼虫は上陸する際に水際で待機しているが、飼育下では水上に顔をだして雨か否かを確認する行動していなかった。ただし、夜間(20時以降)にペットボトルの水を水中に落とすと、その振動で幼虫が光り出し、上陸へ向けての行動をし始めていたように思える。参考までに雨音の振動数のグラフを示しておく。

雨音の振動数グラフ

2003年5月15日

今日は朝から1日中雨であるが、水中で発光するゲンジボタルの幼虫は2匹のみで、うち1匹が上陸した。そろそろ、数からみて上陸も終わりのようである。
水槽の土の上には、あちこちに幼虫の潜った跡の穴が空いているが、ほとんどが、水槽のガラス面に近い場所で、中央には1つもない。
今後は、観察用ゲージのゲンジボタルの前蛹と、上陸用水槽の羽化率と土環境との関係に重点をおいて観察を進めていくことにする。

2003年5月17日

4月29日に観察用容器からの土まゆを掘り起こしている時に、土まゆを完全に壊してしまいゲンジボタルの幼虫が転がりだしてきた。深さ3cmのプラスチックケースに土を入れて指で窪みをつくってその幼虫を入れておいたことがある。今日、久しぶりにその容器を見てみると、その窪みに幼虫はいなかった。丁寧に掘り起こしてみると、横16mm、縦21mmのとてもきれいな「土まゆ」を作っていた。上陸してまもない時期では、土まゆが壊れても作り直すことができるのである。また、深さ3cmしかなくても何とか土まゆを作れるようである。
土まゆは、一見ただの土の固まりと区別が付きにくいが、幼虫が出した粘液が内側から浸透し、周りの土が違いにくっついているので、それとわかる。指でつまめる程度に丈夫ではあるが、決して硬いものではなく力を入れればすぐに潰れてしまうだろう。中では、幼虫が縦型に丸まっている。前蛹期間は、約一ヶ月である。今月下旬には蛹へと変態が行われるだろう。

2003年5月18日  ゲンジボタルの幼虫とカワニナの放流−水との別れ−

上陸用水槽の水部の石をすべて取り除いたところ、未だに上陸していないゲンジボタルの終齢幼虫が7匹と2齢・3齢幼虫が20匹いた。この装置に終齢ばかり60匹を移動したはずだったが、それ以前に使用していた備長炭も一緒に入れたために、1〜2齢幼虫がその隙間に隠れていたことによるものである。終齢については、目視確認できた上陸数が47匹、観察用装置にそれぞれ3匹の上陸、そして未上陸が7匹、合計57匹であることから、ほとんど死なずに上陸を迎えることができたと言える。
本日、この上陸用水槽から塩化ビニール製の水部を取り除き、その部分には土を入れ、手近にあったバジルの種を一摘み蒔いておいた。そして、7匹の終齢幼虫は、湿った用土の上において強制的に上陸させた。残り20匹の小さな幼虫と、残っていたカワニナ6個およびその稚貝およそ500個は、生息地に放流した。
これで、あとは何匹が羽化してくるかである。
今回のゲンジボタルの飼育では、いろいろな行動が観察でき、新たに発見できたこともある。
それについては、後にまとめたいと思うが、次期は飼育はせずに、生息地における観察を重点的に行うつもりである。

2003年5月19日

ゲンジボタルの羽化率を低下させる原因の1つは、上陸した土に発生する「カビ」であると考えられている。「カビ」は、温度20〜30℃、湿度75%以上、有機物の存在 という3つの要因から発生する。上陸用水槽を設置した後植えたハコベが枯れたところに「カビ」が発生した。用土は常にある程度湿った状態であり、水槽内は温度が20℃以上あるために、植物が枯れた(有機物)に発生したのである。しかし、植物を取り除き発生したカビに土をかけたところ、その後カビの発生はない。用土には腐葉土も数%含まれているが、なぜ発生していないのであろうか。土の中には、小さなミミズやダンゴムシ、無数の線虫類が同居しているが、おそらく関係しているであろう。
・・・・上陸した幼虫は、まだ前蛹である。
観察用装置の1つを観察すると、上陸後16日目の前蛹は、まったく動くことなく、静かに発光し続けている。上陸時の強い発光ではなく、まるで卵の発光のように弱くかすかに光っている。装置の淵を軽く叩いて刺激を与えても変わることはない。

2003年5月20日  22日目で蛹に変態

上陸後17日目の幼虫はまだ前蛹のままであるが、そのとなりに頭頂部の一部に穴を開けた土まゆを並べてある。その穴を除くと、黄色いものが見えた。「さなぎ」である。(23時50分)このまゆは、4月29日に上陸したもので今日で22日目である。弾力のある土まゆを丁寧に割っていくと、中から変態したばかり(昨日は前蛹であった)の蛹が現れた。少し黄色みがかったクリーム色である。暗くすると、蛹全体がぼんやりと発光している。腹部先端も発光しているが、まだ幼虫時期と同じ2点が発光している。とても美しい!
観察装置は、常に室内の日の当たらない場所に置いてあり、現在の土の温度は21.5℃である。ベランダの上陸用水槽よりも2℃ほど高い。通常、自然界では30〜40日ほどの前蛹期を経て蛹に変態するが、室内飼育では22日で変態した。温度によるものと考えられる。後にベランダのものと室内のものの羽化日を比較すれば、明確になるだろう。今後は、この蛹は一週間から10日で羽化し、成虫となるはずである。6月1日頃に第1号となりそうである。撮影も試みているが、上手く撮れているだろうか。明日、現像に出す。

2003年5月23日

蛹化後3日目、クリーム色からかなり黄色みが強い色になるが、まだ複眼等の色づきはない。昨日、5月3日に上陸した幼虫も蛹化した。19日目での蛹化でる。
前蛹から蛹化までの期間は、卵の孵化同様「有効積算温度」が適用できると思われる。
また、今回はサンプル数が少なく立証できないが、遅く上陸した幼虫ほど早く蛹化・羽化する傾向もあるかも知れない。

2003年5月24日 ゲンジボタルの蛹の全身が発光する訳

蛹化後4日目、体全体の色の変化はないが、2つの複眼が茶色になってきた。
蛹は発光器だけでなく、全身がぼんやりと発光している。全身がクリーム色であるために発光器の発光が全身に反射しているのかも知れないが、前蛹初期の段階は土まゆを再形成できるが、まったく無防備なこの時期は、ミミズや線虫などに土まゆを破壊される可能性が高い。全身が光ることによって、これら外敵からの防御になっているかも知れない。

2003年5月25日

蛹化後5日目、複眼以外の色づきはまったくなく変化はない。
蛹観察のために合計3つの装置に1匹ずつ上陸させ、これまでに2つの装置から土まゆと蛹を確認していたが、今日は3つ目の装置をそっと解体して土をばらすと、きれいな土まゆが現れた。3つとも少しずつ土の配合を変えてみたが、どれもきちんとした土まゆが形成されていた。またどれも地表から2〜3cmくらいの深さであり、けっして深くない場所にあった。
3つ目の土まゆをそっと割ってみると、すでに蛹になっていた。また複眼が茶色に色づいていることから蛹化後3日くらいたっていると思われる。5月3日に上陸したので、蛹化までに19日かかったと思われる。
今日は、成虫の羽化に備えて成虫用の飼育装置製作の下準備として段ボールと網戸の網を購入する。段ボールを箱にし、幾つかの面をくりぬいて網戸の網を張ろうという考えである。ガラス水槽では、大きさ・高さともサイズが小さい。それに風通しが悪い。60cm×40cm×40cmの網付き飼育装置を購入すれば高価である。そこで季節が終われば簡単に処分できる段ボールを利用して工作することにしたのである。今週末にでも製作しようと思う。

2003年5月26日

蛹化後6日目、複眼の色が茶色から少し黒くなったが、その他の部分は黄色みがかったクリーム色のままである。真っ暗の中では、相変わらず蛹全身がかすかに発光している。

2003年5月27日

蛹化後7日目(上陸後29日目)、昨日とほとんどかわらない。土壌温度は21℃である。
このところ、梅雨のはしりとも言うべきか、毎日天候が悪く気温が低い日が続いている。通常、蛹化後10日くらいで羽化するが、観察中の蛹はまだまだ羽化しそうにない。この低温が影響していると考えられるが、これは、自然の摂理と言える。

上のグラフは、2002年と2003年の5月の平均気温を表しているが、若干今年の方が昨年よりも低い傾向にあるようである。

2003年5月28日

蛹化後8日目(上陸後30日目)、前蛹期が短かったが、羽化までに日数がかかっている。しかし、複眼の色が一段と黒くなり、体全体のいろも薄いピンクがかったクリーム色になってきた。前胸部や前羽などの色づきはまだまったくない。ただし、発光器がかなり形成されてきた。観察中の蛹は雌であることがはっきりと区別できるまでになる。その他の2匹の蛹も同様である。
蛹は、相変わらず何の刺激もなくても四六時中、体全体がぼんやりと発光している。
ISA400のリバーサルフィルムで4倍の露出かけて撮影しているが、人の目で見ているように撮影できるだろうか?何とも不思議で幻想的な光景である。誰も見ることの出来ない土の中の土まゆの中で、静かに光り続けているのである。この発光はいつ頃まで続くのであろうか?記憶では、成虫は発光器しか光らないと思うが・・・
土壌温度は22℃。ベランダの上陸用水槽の温度よりも2℃高い。

2003年5月29日

蛹化後9日目(上陸後31日目)。22時に観察すると、2匹の蛹の羽が黒くなっていた。前胸部の色も薄いピンク色になり黒い十字の模様もかすかに現れてきた。土壌温度は23℃である。おそらく2日後に羽化が始まると思われる。

2003年5月30日

蛹化後10日目(上陸後32日目)。腹部背面側が少し黒くなってきた。
明日の夜にも羽化が始まるだろう。

2003年5月31日 第一号 ゲンジボタルのオスの羽化  第二号 メスの羽化

今朝10時に観察すると、5/23に蛹化した(オス)がすでに羽化し、羽がまだ白い状態で土まゆの中でじっとしていた。蛹化後8日目(上陸後28日目)。午後14時には、白かった羽も黒くなりゲンジボタルの誕生である。このまま2〜3日は、土まゆの中で体がしっかりと固くなるまで待機すると思われる。
メインに観察しているメスの蛹は、14時現在、腹部背面側がより黒くなってきた。
17時、土壌温度23℃。とうとう羽化が始まった。蛹化後11日目(上陸後33日目)である。

頭部からゆっくりと最後の脱皮である。体をゆっくりと動かしながら皮を腹部に押しやっていく。脱ぎ終わるとそれまで横向きだった体を半回転させて背をこちらに向けた。白い上羽は半開きの状態である。およそ1時間で羽化完了である。

前蛹期間は、土壌温度によってその期間がかなり短縮されるようであるが、蛹の期間はそれほど温度に左右されず10日前後で羽化するようである。
同時期に上陸したベランダの上陸用水槽からいつ頃出現してくるか、そして雌雄の出現の時間差、雌雄の割合が今後の注目すべき点である。

*羽化はあくまで蛹から成虫に脱皮することであり、地上に出現し飛び回る、いわゆる発生とは別に考えるものとする。

今日は、成虫の一時的な飼育装置として、段ボール(50cm×40cm×40cm)縦型に組み立て、3面をくりぬいて網戸用の網を張り付けたものを作製した。
同じ親からのF1同士の交配は、近親交配問題が生じるので、避けなければならない。
羽化数にもよるが、観察後はすべて生息地に放つ予定である。

21時。羽化したメスは、上羽はすっかり黒くなったが、腹部は膨らんだままでまだクリーム色をしている。今後少しずつキチンが硬くなっていく。


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