夏を振り返って

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 遠征続きの7、8月が終わり、昆虫の観察と写真撮影も一段落となった。全体的な反省は年末にするとして、ここで一度、この夏を振り返っておきたい。
 デジタルカメラが一般的となった昨今、昆虫写真の撮影を趣味としている方は多い。自然風景写真では、フィルムがまだ健在であるが、昆虫写真では、すべてデジタルと言っても過言ではない。デジタルの手軽さとインターネットの情報が、余暇をもて遊ぶかつての昆虫少年の心に火を付けたのだろう。昭和50年(1975年)から、当時発売されたばかりのフィルムカメラ、オリンパスOM-2で、ホタルを主として昆虫を撮ってきた私も、5年前からデジタルに移行し、これまで以上に昆虫と親しんでいる。
 私の場合は、自宅から半径600kmくらいを圏内として、チョウ、トンボ、甲虫類の中から美しい種、珍しい種を基準に選定し、被写体を決めたら、それぞれの生態と生息環境を学び、場所を決めて発生時期に合わせて観察と撮影の遠征計画を立てている。その年によって、初見初撮影の種もあれば、撮り直しの場合もある。週末しか動けないから、予備として2週は同じ被写体の予定を組むが、発生時期が重なることが多く、また生息地もバラバラであるから優先順位を付けるのに悩むことが多い。計画通りに遠征をしても、現地で初めて探索する場合が多いから、ロケハンに時間がかかり、目的とする被写体に出会えないこともある。更には、確実な生息場所と発生時期であっても、悪天候によって空振りに終わることもある。
 今年の夏は、天候が安定せずに悩まされ、証拠程度にしか撮れなかった種もあるが、オオイチモンジ、ヒヌマイトトンボという2種を除いては、計画を達成することができた。

 現地においては、目的の昆虫に全神経を集中させるので、撮影済みの昆虫は撮らないことがほとんどであるが、計画に入れていない未撮影の種に偶然出会うこともある。
 ミドリヒョウモン(Argynnis paphia)は、ヒョウモンチョウ族の中では本州中部において最も普通に見られる種類であるが、これまで出会っていてもカメラを向けることはなかった。ヒョウモンチョウの仲間は、どれも同じに見えてしまい敬遠していたことが理由だ。こうした「なおざり」な昆虫は多い。チョウでは、ヒカゲチョウやジャノメチョウ、セセリチョウの仲間などがそうであり、トンボではサナエトンボの仲間がそうである。今のところ、優先順位は低いが、徐々に計画に組み込んでいこうと思う。
 キバネセセリ(Bibasis aqulina)は、分類学的にはアオバセセリと近く、太い胴体と大きな複眼を持つセセリチョウ科に属するチョウである。北海道から九州まで分布しているが、本州中部以西では、標高の高い山地の雑木林周辺や渓流沿いに生息している。環境省RDBには記載されていないが、西日本を中心に各県のRDBにおいて絶滅危惧種としており、東京都RDBでは、絶滅危惧II類(VU)に選定している。
 キバネセセリは、本年の撮影予定にはなかったが、7月に鬼無里の峠でスジボソヤマキチョウを撮影している時に、偶然出会ったもの。1枚だけだが撮影した。
 ミドリヒョウモン、キバネセセリは、それぞれ初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で122種類目と123種類目となる。

 昨年は、9、10、11月と兵庫県まで遠征したが、この9月は、ホタル関係の会合や保全指導があるため、今のところ写真撮影の計画は立てていない。ただし、急に思い立って出かけることもあろう。秋には、シルビアシジミ、ルーミスシジミの撮り直しやミルンヤンマとカトリヤンマの産卵等の撮影を計画している。10月末には、未撮影のチョウを求めて和歌山遠征を計画しており、その後は、紅葉、そして霧氷・・・自然風景に移行していく予定だ。

IMG_3520.jpg

ミドリヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3521.jpg

キバネセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

コメント(4)

こんにちは。
この夏もお疲れ様でした。
まずまずの成果で良かったですね。
今度は、自然風景の傑作を楽しみにしています。

おはようございます。
この夏は、週末の天候が不順だったにもかかわらず
あちらこちら、お出かけになり沢山の昆虫をお撮りになり
初見のチョウ等もあって良い成果だったことと思います。
限られた条件で、遠方へのドライブ、いつもご無事で
帰られて良かったことと、ブログを見せて頂きながら
思っています。
これからの自然風景のお写真、とても楽しみです。
今年はどこへいらっしゃるのでしょう?
期待しています。

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