ホタル百科事典ホタルの飼育と観察日誌

東京にそだつホタル

ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2002年12月)

2002年12月01日

カワニナは10日で12個食べられていた。やはり少なくなっている。カワニナ採集は来週以降で大丈夫そうである。しかし、脱皮殻が多くあり、白い幼虫も5匹ほと発見した。どれも大きい幼虫たちである。
装置内で一番大きいと思われるゲンジボタルの幼虫の体長を測ると、26mmあった。ほとんど終齢に近い大きさ、いや終齢かも知れない。

2002年12月04日  終齢に達する

毎日行っている23時のゲンジボタルの飼育水槽の水変え時である。水槽にかぶせてある蓋を取ると、とても大きなホタルの幼虫が目に飛び込んできた。体長は32mm。体厚もあり丸々と太っている。まさに終齢幼虫にふさわしい体格である。12月初旬で終齢に達してしまったわけである。
水温は16℃で安定。この2〜3日カワニナをよく食べており、大きな脱皮殻もいくつか目立っている。残りのカワニナ数は15個。
20mmを越える幼虫が全体の6〜7割になってきた。この時期に早々と大きく成長した幼虫たちの上陸までの4ヶ月の行動は、いったいどのようなものなのであろうか。

2002年12月05日 何故?

本日もカワニナをよく食べており、大きな脱皮殻もいくつかある。水槽の上からちょっと覗いただけで脱皮直後の幼虫が3匹、しかも終齢幼虫である。今日は小春日和で気温は19℃まで上がった。水温も18℃ある。このまま上陸してしまうのではないかという不安がある。ホタルはもとより昆虫は、季節に合わせて生活している。多くの昆虫は、気温や日長時間によって季節を感じ、そしてホルモンによって脱皮成長していく。温かいままだと蛹にならない昆虫もいれば、(一度低温を経験しないとだめ)温かいままだと冬眠せずに成長して羽化する昆虫もいる。ゲンジボタルの場合はどうであろうか。何故こんなに早く終齢幼虫になるのか。単に水温が高く、餌が豊富だったからであろうか。しかし、自然界でも志賀高原の生息地では温泉が流入し水温が高く、しかも餌が豊富の場所がある。勿論成虫の発生は5月末からである。以前の飼育日誌でも触れたが、暗いままにしておいたら、いつまでも上陸しなかったことがある。気象条件と成長とは関係があるのは確かである。今一番気になる問題であり、研究課題である。

2002年12月06日

1日にカワニナの殻を取り除いているが、10日で12個食べられていた。今日、カワニナの殻を取り除くと、何と23個ある。5日で23個とはどうなっているのか?水温は16℃。これまでもそうであるが、毎回カワニナを100個ばかり投入しているが、カワニナがある程度食べられて数が減ってくると(残30個くらい)、その後の減り方が急に大きくなる。つまり、カワニナの密度が低いほうが幼虫はよく食べるということになる。いずれにせよ、明日は仕事なので雨の日曜日に、少しでもいいのでカワニナを採取しなければならない・・・。

2002年12月07日

仕事から帰って早速水換えである。その後、壁にへばり付いている生き残りのカワニナを大きい幼虫の鼻先に置いてみた。すると2分もしないうちに攻撃開始。カワニナは麻酔がきいて動けない。あっという間に石の隙間に引きずり込まれてしまった。これで生き残りのカワニナはゼロになってしまった。明日は天気が悪いようだが、採取にいかねば・・・。今日は寒い。都心でも気温は4.5℃まで下がった。室内のゲンジボタル飼育水槽の水温は14℃。幼虫は元気いっぱいである。以前、日誌に書いたかも知れないが、ホタルの幼虫は、小さいうちは完全に石などの下に隠れていて、石をひっくり返さないと幼虫を見ることが出来ないでいた。しかし5齢ほどまで大きくなると、石の下などから頭をだしていることが多い。まるで周りの様子を伺っているかのようである。いや、実際そうかも知れない。

2002年12月08日

午前10時にカワニナ採取に出かけたが、天候は小雨で気温は7℃。案の定カワニナはなかなか見つからない。小川への落ち葉の量も相当なもので、より一層採取を困難にしている。小一時間ねばって、枯葉の下や泥の中に潜っているカワニナを39個採取した。2週間くらいは大丈夫だろうか?
午後8時に飼育水槽の水換えをした際に、カワニナの殻を取り除く。先日も行ったばかりであるが、何と7個も食べられていた。午前中に投入したものも食べられている。水温は14℃。一時期食欲が落ちたが、一体何故この時期に再び食欲旺盛になったのだろうか。

2002年12月09日

今日は東京に初雪である。12月の降雪は11年ぶりだという。仕事も師走ならではの忙しさで、6時半に家を出て帰宅は24時になってしまった。いつもは室内灯を消している時間であるが、今日はまだ付いている。早速水槽を覗くと、いるいる、ゲンジボタルの幼虫たちが徘徊している。通常の帰宅時間の22時頃は、幼虫はほとんど徘徊はしていないが、今日24時現在では、カワニナを食べているものやうろうろしているものが多い。しかも蓋があるとはいえ、灯りがこうこうとついている状態でである。幼虫には体内時計があり、我が家での(あるいは自然界の)リズムが刻み込まれているのかも知れない。
脱皮も盛んで、どんどん終齢になっていく。水温は13℃に下がっているが、昨日投入したカワニナも5〜6個くらいは食べられている。体内時計があるとするならば、それは、水温や日長によって左右されていると思われるが、我が家の幼虫のものは、正しく時を刻んでいるのであろうか。次から次へと終齢に達することも気になる。

2002年12月11日

水温13℃。終齢幼虫と3齢幼虫が一緒にカワニナを食べている。

2002年12月12日

カワニナの殻を取り除いてみると、その数21個。5日間で、しかも大きな(3cm前後)のカワニナを21個食べてしまった。また、週末に採取に行かなければならないだろう。この飼育で今、興味があるのは、幼虫の成長度合いについてである。何故、この時期になって再び食欲が増したのか?何故、この時期に終齢に達するのか?そしてそうさせる要因は何か?気象条件や体内時計との関係は?また、自然界での成長との違いは?

2002年12月14日

暖冬傾向とは言われているものの、やはり寒い。放射冷却とからっ風で朝の空気はとても痛い。北側では月曜日の雪がまだ残っている。そのような中、室内の飼育水槽では水温12℃。脱皮をする幼虫やカワニナを食う幼虫。外の世界とは関係ないようである。過去の観察ノートをいろいろと調べてみると、幼虫にとって水温10℃が1つの目安のようである。10℃を下回ると、休眠ではないがそれに近い状況になっていたという記録がある。(1978.古河)ホタルも変温動物であるから、その辺の水温が、活動温度の目安なのかも知れない。水温が10℃以上では、現在のように与えれば与えただけどんどんカワニナを食べて成長するのかも知れない。昆虫の種類によって(カミキリなど)は、幼虫期に低温を経験しないと蛹化しないものもいるし、または幼虫で越冬するチョウの仲間では、高温のまま飼育すると越冬しないで成長し、すぐに蛹化するというものもいる。詳しく解明するには、いろいろと条件を変えて飼育し、比較する必要があるだろう。ただし、このような環境もある。長野県の志賀高原の自生地では、温泉が流入しているために冬期においても水温が高い。そのため成虫の発生期間は長い(5月〜9月)が、決して春先ではない。つまり、幼虫は水温だけで季節を判断してはいないということである。

2002年12月15日

朝、カワニナの殻を取り除いてみると、その数7個。2日で7個食べている。今日は天気も良く比較的温かいので、早速カワニナ採取へ出かける。小川は、落ち葉で埋め尽くされている。この場所はこの大量の落ち葉の量がここの生態系の基本になっている。落ち葉があってこそカワニナがいきているのである。しかしながら、上から見ただけではカワニナは1個も見つけられない。皆、落ち葉の下や砂の中に潜っているためである。やばい。近くに落ちていた木の棒で落ち葉をかき分けてみる。泥とともに水が濁るが、しばらくすると流れで透明になっていく。ようやく30個ほどのカワニナを採取することが出来た。
今日は、飼育水槽の置き場所を移動した。リビングの隅の棚の上だったが、妻に邪魔者扱いされて、普段あまり使われることのない部屋に移動。しかし、かえって好都合であった。暖房も使わなければ人工照明も夜間はつけない。水温も現在よりも低くなり、また日長時間が外と同じになるわけである。これまでより6時間も日長が短くなるわけである。これで幼虫は、「冬」を感じてくれるのではないだろうか。
幼虫の中には今日も脱皮をしたものがいて、終齢幼虫の数が日増しに多くなっていく。体長30mmの幼虫が20〜30匹以上はいるだろう。40mmもある大きなカワニナに4匹の終齢幼虫が一緒に食い込んでいる。

2002年12月16日

12月には珍しく気温が14℃まで上がり温かい1日だったために、水槽の置き場所を移動しても、水温は14.5℃までになっていた。しかし、日長時間が短くなり、会社から帰宅した21時過ぎに水槽を覗いてみると、幼虫たちは絶好調でカワニナを食べていた。それも終齢幼虫たちが食べている。この食欲は何なのだろうか。上陸するまでの間にあと何個のカワニナを食べるのだろうか。餌が豊富なだけ食べるのだろうか?
また、暗い時間が増えたことによって、幼虫の活動時間が長くなったようである。ちゃんと季節を感じ取っていてくれているのであろうか。

2002年12月17日

帰宅後、カワニナの殻を取り除いてみると20個であった。日曜日の午前中に追加しているので、およそ3日で20個を食べてしまったわけである。幼虫の総数(約100匹)と成長度(終齢が4割)を考えれば、この数は決して多くはないかも知れないが、この時期にこれほどのカワニナを食べてしまうということは、過去の飼育経験ではなかったことである。今日も数匹が脱皮しており、終齢幼虫が日増しに多くなっていく。水温は16℃ある。部屋が西日のあたる位置にあるので、天気の良い日は室温が上昇するために水温も上がっているのである。(夜間は若干下がる)
考えてみると、ずっと室内で飼育したのは、今回が初めてである。これまでは、ベランダが主で冬期の水温は5℃近くまで下がっていた。水温と成長速度には大きな関係があるだろう。また、週末にカワニナを補充しなくてはならないかも知れない。
このまましばらく様子を観察し、来年1月下旬には上陸用装置を準備し、幼虫を移動させたいと思う。その時に幼虫の正確な総数と大きさを測定しようと思う。

2002年12月18日

水温は14℃で昨日よりも2℃低い。今日はカワニナを食べている幼虫は1匹だけである。しかも、暗い状況下で歩き回っていた幼虫は4匹で、後は枯葉の下や石の下に隠れている。昨日よりも随分と様子が違っている。水温のためであろうか。
ここしばらくの様子を箇条書きにしてみると、

  1. 11月下旬頃、餌の摂取量が減った。
  2. 11月下旬頃、大きな幼虫の多くは、石の下などに全身を隠さず、頭を出していた。
  3. 12月中旬頃、餌の摂取量が増えた。
  4. 12月中旬頃、幼虫が次々に脱皮をし、多くが終齢になった。2齢か3齢、あるいは終齢という二極分化の成長。
  5. この間の水温は、自然界よりも高いが、多少の上下はあっても徐々に低下傾向。カワニナは水温に敏感に反応し、15℃を下回ると活動が鈍くなる。 一方、幼虫は12℃でも活発に活動している。
  6. この間の日長時間は、自然界よりも長いが、徐々に短縮傾向。
  7. 餌としてのカワニナは、常に大量に投入し、幼虫が食べたいときに食べられる状況。
2002年12月19日

単純な飼育であるが、研究テーマや視点によっては、日々の観察も重要であり、幼虫の変化にもよく気が付くようになるものである。以前に、こんな質問をいただいた。「ホタルのシーズンオフの時は、どんな活動をしているのか?」ホタルのシーズンとは、おそらく7月頃の成虫が飛び交う時期のことで、シーズンオフとは、それ以外の季節を言っているのだと思うが、私たちにとっては、1年中がホタルのシーズンであり、日々研究と観察の連続である。ホタルは、今日も、そしてこの瞬間も生きているのである。
今日の水温は13.5℃。昨日と違って幼虫は活発に活動し、残りの生きているカワニナは7個となってしまった。
石の影で、脱皮をしている幼虫がいた。体を半円に曲げてじっとしている。しばらくすると上半身だけ伸び縮みさせる。前胸部の背面あたりの殻がやぶけて、白い幼虫が姿を現す。そしてさらに伸び縮みさせながら、古い殻を尾の方に寄せていき、最後に尾脚を抜いて脱皮完了である。

2002年12月20日

巷ではクリスマスムード一色だが、どうも年をとるたびに「感性」というものが鈍感になるのか、あまりわくわくとした気持ちを持てなくなってきた。好きなクラシック音楽やホタルに関しては、感動するのだが・・・・。
水温は13.5℃。相変わらず活発に活動し残りのカワニナは2個となる。
少し絶食させたほうがよいのであろうか?とりあえず、実験的に食べるだけ与えてみようと思う。3連休ともに天気が心配だが、またカワニナを採取に出かけなくてはならない。
わずか100匹前後の幼虫を育てるのに、これまで1500個くらいのカワニナを与えてきた。すべての幼虫が成虫になるには、計算上2500個のカワニナが必要だが、2年越しの幼虫も3割ほどいるので、今期は2000個くらいのカワニナが食べられる計算である。まだまだ500個のカワニナが必要である。
これだけの数のカワニナをすべて養殖で賄うということは、ほとんど不可能であると言わざるを得ない。思えば、今回の飼育方法特に餌の与え方は、かつての飼育とは全然ちがっているのである。かつては、カワニナは別の水槽で飼育しストックしておき、そこから幼虫の水槽へと5〜6個程度投入する。そして食べてしまえば再び5〜6個投入するという方法であった。しかし今回は、カワニナのストック水槽はなく、決して大きくない幼虫の飼育水槽へいきなり200個のカワニナを投入していた。食べ尽くせばまた200個を投入。幼虫にとっては、いわば時間無制限の食べ放題状態なのである。このことが、多くの幼虫をこの時期に終齢までそだてることが出来た(いや幼虫が育つことが出来た)理由の1つであると思う。
ただし、このような状況は自然界では決してあり得ないし、また起こってはならないことである。カワニナが大量に生息することは必要不可欠であるが、ここまで過剰な状況は異常であると言える。この幼虫たちが、すべて同時期に成虫になっても、決してすべてを生息地に放つことは出来ない。大量の人工飼育は、遺伝的形質の存続など自然の摂理に逆らっている行為なのである。

2002年12月21日

夜中からの冷たい雨は朝になっても止むことはなく、本日1日中降り続く予定である。午前10時ころからはみぞれ混じりになり、やむなく本日のカワニナ採取は断念した。飼育水槽の水温は12℃。生き残りのカワニナはとうとう1個になってしまった。水槽の置き場所を変えたために、本日のような天気の日では、ほぼ1日中薄暗い。幼虫は日中でも石の下に隠れることなく、落ち葉の上や石の上でじっとしているか、カワニナを食べているかどちらかである。

2002年12月22日

冬至を迎え、日長時間が1年で一番短い季節である。今日は、午前中にカワニナの採取に出かけ、70個を採取。やはりすべてのカワニナが砂や泥の中に潜っていたが、木の枝で落ち葉や泥を払いのけて何とか採取できた。幼虫は、たったの1週間で30個以上のカワニナを食べ尽くしてしまっている。今日の補充で2週間はもつだろう。採取したカワニナの大きさはいろいろである。大きな(4cmくらい)カワニナを食べている幼虫はやはり大きな終齢幼虫だが、食べ終わるのに3日間かかっている。また、補充前では生きているカワニナがゼロであったために、多くのホタルの幼虫が1個のカワニナにたかっていた。水温は12℃である。
都内のホタル生息地でこの飼育のように大量にカワニナが生息している場所はない。ましてこの時期では、カワニナを食べることは至難の業であろう。この時期に終齢に達する幼虫もほとんどいない。もし、飼育下と同じようにカワニナを食べることができたならば、同じように成長するのだろうか。また、上陸までまだ4ヶ月あるというのに、何故幼虫は餌が豊富ならば急いで成長してしまうのだろうか。体内時計が狂い、季節判定が出来ていないのだろうか。

2002年12月23日

すごい食欲である。それぞれの幼虫が1個ずつカワニナを食べている。日中でも薄暗いために1日中食べ通しである。かなり大きいカワニナも食べられているが、全部食べきらないと、溶けた肉片が残っているために水が腐敗しやすい。幼虫にはあまり悪影響はないが、全量の水換えを行った。

2002年12月24日

メリークリスマス!
ホワイトクリスマスではないが、とても寒い日が続く。帰宅後にカワニナの殻を取り除くと22個であった。2日で22個をたいらげてしまった。
ゲンジボタルの幼虫とカワニナの生息密度を考えてみると、10cm四方に幼虫が約18匹、カワニナが約5〜35個、自然界では、都内の一番生息数の多い地区で、10cm四方に幼虫が約7.5匹、カワニナが約5個である。勿論、自然界では平均的に分布しているのではなく、多くいる場所もあれば、まったくいない場所もある。いずれにせよ、幼虫を上回る数のカワニナは生息していない。これが、1匹のメスの成虫から生まれた幼虫が成虫になるのが3%前後の所以なのである。我が家の飼育環境も、例えば、今回のように、1匹のメスが産んだ卵だけでなく、もっと多くのメスの産んだ卵から孵化させた幼虫を飼育し、カワニナの密度も低くすれば、成長度合いももっとばらつきが出て、12月に終齢に達する幼虫も少なかったのではないかと思われる。
逆に自然界において、幼虫を上回る数のカワニナが生息していれば、非常に多くの幼虫が育つと言える。
後は、今後の終齢幼虫の行動を観察したいと思う。つまり、幼虫の上陸の季節の判定についてである。

2002年12月25日

今年も残すところ1週間である。飼育水槽の水温は13℃。幼虫の食欲は相変わらずである。水槽底面には砂を敷き詰め、そしてあちらこちらに石や備長炭、落ち葉をおいてあるが、それらをひっくり返すと大きな幼虫がごろごろと姿を現す。しかしながら、そうしなくても上から覗いただけでも、幼虫を沢山確認することができる。特に面白いことに、下部槽から汲み上げた水が流れ落ちる場所の近辺に、沢山の幼虫が互いに身を寄せ合っているのが見られる。数匹でカワニナを食べているというものではなく、ただ、その場所でコロニーを形成しているのである。カワニナもその部分に集まりやすい傾向がある。水がよく攪拌されている場所が良いのであろうか。

2002年12月26日 

石油ストーブ用のサイフォンを使った水換えは、毎日行っている。このところは、80%程の水を取り替えている。水温は13℃で安定している。カワニナの殻が目立つようになったので、各々の石もひっくり返して殻を取り除くと、何と27個であった。つまり、2日で27個のカワニナを食べてしまったのである。まあ、100匹のゲンジボタルの幼虫がそれぞれ1個ずつカワニナを食べれば、一度に100個になるわけであるから、そう驚くことでもないと思う。また、最近は日長時間を縮めて、暗い時間が長くなった影響もあるのかも知れない。
カワニナの殻を取り除く際に見られたゲンジボタルの幼虫をおおざっぱに測定すると、3齢ほどのものが10匹前後、4〜5齢とおもわれるものが10匹前後、残る数十匹はすべて終齢幼虫であった。大きく、しかも丸々と太った幼虫が、決して広くない飼育水槽にごろごろしている。餌が極めて豊富である状況下では、成長のばらつきもあまりなくなるのではないだろうか。成虫になるまで1年かかるものとおそらく2年以上かかるものの割合は、約9対1の状況である。
このままでは、毎週カワニナ採取に出かけなければならない・・・。
こういった今回の状況で期待できることがいくつかある。1つは早い時期に終齢に達すれば、上陸までの間に十分に成熟することができ、もしかしたら東京地方ではあまり見られない一斉上陸が行われるのではないかということである。もう1つは、餌が極めて豊富な環境で育った幼虫たち(しかも1匹のメスの産んだ卵から孵化した兄弟たち)が成虫に羽化したときの雌雄の比率である。このような環境ではメスの比率が大きくなるという説があるからである。(通常は、オス:メス=3:1)

2002年12月28日

毎日この冬一番の寒さの記録を更新している。ゲンジボタル飼育水槽の水温は12℃である。仕事が忙しく、なかなか十分な観察ができない。勤務する会社は365日営業。私に年末年始はない。今朝は6時半に出勤したが、朝まで忘年会で盛り上がったOLやサラリーマンの帰宅が羨ましくもある・・・。21時に帰宅した後、日課である水換えを行う。幼虫の動きは緩慢で、這い回るものはいない。3cmを越える巨大幼虫が石の上でじっとしている。灯りをつけると、ゆっくりと石の下に隠れてしまった。一方ではカワニナ3個に数匹の幼虫が群がっていた。生きているカワニナは残り11個である。補充しなくては・・・・。

2002年12月29日

水温が10℃まで低下した。ゲンジボタルの幼虫の動きは緩慢だが、元気である。午後3時半よりカワニナの採取に出かけたが、すぐに薄暗くなってしまい10個のみの採取となる。
23時、就寝前に飼育水槽を見る。すると2段式の下部水槽に2.5cmほどの幼虫が2匹いた。飼育槽の壁を登って一回り大きい下部槽に移動したわけである。これはつまり上陸行動なのである。水温は11℃。室温もほぼ同じ。湿度は40%。早すぎる!
明日も同じ行動を見せれば、間違いなく上陸である。

2002年12月30日

今朝5時に水槽を見ると、また1匹下部水槽にいた。やはり、上陸なのであろうか。しかし、ゲンジボタルの幼虫の大きさが少し小さいようにも感じる・・・・。とりあえず、昨晩の幼虫もそうであるが、元に戻した。
帰宅後(23時半)に観察すると、今日は下部水槽にはいなかった。水温は12℃。ただ、カワニナがすべて食べられており、幼虫は活発にはい回っている。しばらく注意深く様子を観察する必要があるだろう。また、上陸に備えて上陸用の装置を正月中に準備する必要もあるだろう。これで、上陸となれば、新たな疑問が生じ、また様々なことが明らかになる手がかりもつかめると思う。

2002年12月30日

水温は12℃。ゲンジボタルの幼虫の上陸行動は見られなかった。


前 項[ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2002年11月)]  /  次 項[ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2003年1月)

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