ホタル百科事典ホタルの飼育と観察日誌

東京にそだつホタル

ゲンジボタルの飼育と観察日誌(2003年3月)

2003年3月1日

3月は、冷たい雨でスタートした。水温は午後4時で5℃。ゲンジボタルの幼虫は1匹も見あたらない。1つ問題が起きた。水換えは、毎週末に8割交換し、日頃は蒸発により減った分だけ足すということを行っているが、午前中3時間ばかり日光にあたるために、水中に藻が繁殖し始めたのである。カワニナが食べてくれればよいのであるが、すぐに幼虫に食べられてしまうので効果はない。少しぐらい藻が繁殖した方が良いとも言えるが、繁殖しすぎてしまうのが懸念される。(大型水槽で、ある程度生態系を再現するような方法なら別だが・・・)

2003年3月2日

一雨毎に春がやって来る。今日は南風が吹き込み、気温は13℃くらいまであがった。
藻が生えすぎないように、水の部分に直射日光が当たらないように、ガラス面に紙を貼った。ただし、陸地部分には、日光が当たるようにしてある。
三寒四温の季節で、明日はもっと暖かいらしい。そしてまた天気は下り坂。上陸用水槽の近くに置いてある、鉢植えのラベンダー、コケモモ、ラズベリー、ブル−ベリ−などの植物は、まだまだ芽吹いてはいない。これら植物も季節に敏感であるから、ゲンジボタル幼虫の上陸の比較対象として見ていこうと思う。

2003年3月3日

3月3日。桃の節句。今日は、東京地方に「春一番」が吹いた。
強い南風で気温も上がり、夕方にはかなりの雨も降った。21時の水温は9℃。まだまだ上陸には低い。水槽内では、ゲンジボタル幼虫の姿はほとんど見ることが出来ず、カワニナを食べている数匹以外は、石の下に隠れている。

2003年3月5日

気象庁より今年のサクラの開花予想が発表された。東京地方の開花予想日は、3月26日で、平年よりも2日早い予想である。
サクラは、夏頃に翌春咲く花の元となる花芽を形成し、休眠に入る。花芽は冬の低温に一定期間さらされると休眠から目覚め(休眠打破)、花芽は休眠打破のあと温度の上昇とともに生長し開花する。サクラの予想開花日は、過去の開花日と気温のデータから予想式を作成し、これに、昨年秋からの気温経過と気温予報を当てはめて求められている。
さて、ゲンジボタルの幼虫たちはちゃんと季節の変化を察知してくれているだろうか。今朝は、バケツの水に薄い氷が張るほど冷え込んだ。21時の水温は6℃である。日長時間は長くなっても、なかなか水温が上昇しない。数匹がカワニナを食べてはいるが、全体的に行動に変化は見られない。

2003年3月6日  啓蟄について

暦の二十四節気のひとつで、雨水後15日めの3月6日頃に当たる。 “啓”は『ひらく』、“蟄”は『土中で冬ごもりしている虫』の意で、文字通り地中で冬ごもりしていた虫が春の到来を感じ、草木が芽吹くと同時に地上へ這い出してくるという意味である。天文学的には太陽の黄経が345度になったときである。
二十四節気(にじゅうしせっき)とは、太陽年をその黄経に従って24等分して、季節を表すのに用いる中国古来の語。等分点はそれぞれ立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑・立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至・小寒・大寒と名付けられている。
実際に虫が這い出してくるのは、平均気温が10℃以上で地中の温度を気温が上回る様になる4月上旬過ぎである。啓蟄と言う節気は、実際の季節とかけ離れてしまっている事になる。
しかし、この3月6日を旧暦で考えれば、旧暦を新暦に換算すると4月7日になるのである。つまり、現在の暦では、4月7日が啓蟄なのである。
今日は22時よりみぞれ混じりの雨である。水温は6℃。しかし、幼虫に昨日とは違った行動が見られる。石の下より頭を出しているものや、体半分を水上に出すように石の上にいるものもいる。

2003年3月8日

朝から備長炭についたコケを取り除くために、水槽内から備長炭を出してブラシでこすり取った。その際、備長炭の下に終齢幼虫がたくさん隠れていた。皆、体半分を砂に埋めるようにしていた。カワニナを食べているものもいるが、やはりこの時期は一時的に休眠していると考えたほうが良いのではないだろうか。
ただ、「休眠」の定義付けも曖昧である。餌を食べずにじっとしていることが休眠に当たるのであろうか。
今日はその後、カワニナ採取に出かける。一ヶ月ぶりである。天候もよく、気温も上がったために、かなり容易に56個採取。現在、一週間で6個ほどのペースで食べているので、これだけあればこれが最後のカワニナ採取になるだろう。

2003年3月10日

昨年と違って、今年はまだまだ寒い日が続く。今日の21時の水温は4℃である。なかなか本格的な春はやってこない。上陸もかなり先になりそうである。上陸についてあれこれ考えてみると、上陸する土の温度も重要ではないかと思う。水温は、場所にもよるが、飼育水槽の場合は気温に左右されやすいが、自然界の渓流では、それほど気温に左右されない所もある。(どちらかと言えば、日照に左右されるかも知れない。)しかし、土壌温度は、気温と日照の影響を受けやすい。今日のように日中が晴天の場合、日照は大夫強いので、土壌温度はかなり高くなるが、夜間の気温は1℃ほどまで下がるので、土壌温度も低くなると考えられる。いくら水温が上昇しても、土壌温度が低ければ、上陸しないのではないだろうか。土壌の最低温度がある一定の温度以上になることが、必須条件と思われる。ゲンジボタルの幼虫が水面からそれを知るすべは、気温と日長、光りの強さであると思われる。

2003年3月11日

1月26日に終齢幼虫60匹を上陸用水槽に移したが、このゲンジボタルの幼虫たちが今日までに食べたカワニナの数は90個になる。個体ごとの観察はしていないのではっきりしたことは言えないが、おそらく1匹で2個以上食べているものや、まったく食べていないものもいるだろう。今後、上陸までに終齢幼虫が何個のカワニナを食べるのかの平均値を求めてみたいと思う。
今日も、これまで同様にほとんど様子に変化はない。
8日の日に、上陸用の土の部分に「クレソン」の種を蒔いたのだが、それらが発芽し始めた。適度な湿度と日中の気温上昇の為だろう。ハコベとオオイヌノフグリだけでは、生えている植物が足りないと思い播種したが、少し多く蒔きすぎたようである。今後どれほど成長するかは解らないが、あまり茂りすぎても困るので、後に間引きが必要だろう。

2003年3月15日

3月半ばになったが、なかなか春がやってこない。ゲンジボタルの幼虫の様子に変化はない。
クレソンが発芽し始めた。ひじょうに多いために、かなり間引きをした。この環境でクレソンが育つかどうかは解らないが、上陸の環境としては、かなりいい感じに仕上がってきたと思う。

2003年3月19日

日差しはすっかり春らしくなってきた。しかし、最高気温は10℃前後で最低気温は1℃くらいと、まだまだ低い。水槽内では、植えた植物が随分と茂りだしてきた。日中は、ガラス張りの水槽内の温度が上がるからだろう。ホタルの幼虫の活動も少しずつではあるが、活発になってきたようである。カワニナを食べているのは相変わらずだが、夜間に動き回るのが見受けられるようになってきた。

2003年3月21日 春分の日

日差しは強くなり、風がなければ、ぽかぽか陽気というところである。しかし、ゲンジボタルの幼虫の様子にはまったく変化がない。(カワニナは食べている。)過去3年間の最低気温の推移をグラフに表してみる。
3月〜5月の最低気温の推移グラフ
年によって変動はあるものの、6月20日頃に発生ピークであるから、逆算すればゴ−ルデンウィ−ク頃に上陸していることになり、実際、自然発生地では、そのころの雨天時である。幼虫の上陸の1つのポイントとして最低気温が10℃以上ということが挙げられる。
気温は地温と連動しており、上陸したゲンジボタルの幼虫は前蛹で過ごしたあと、ある温度(地温)になると蛹化すると思われる。最低気温が10℃以上というのは、そのための1つの基準になっているのではないだろうか。

2003年3月24日

ゲンジボタルの幼虫は、最低気温(地温)10℃を、どのように感知しているのだろうか。水中からでは、解らないはずである。上陸前には、水面から顔を出す行動をするが、その行動を誘発するものは何なのだろうか。地域によって水温はまちまちであるし、それほど上昇しない渓流もある。以前の飼育では、水温が25℃でも上陸しないことがあった。水槽の蓋を閉めていて常に暗い状況下のことである。とすると水温ではないかも知れない。日長時間か・・・。
桜前線のようにホタル前線があるのは何故だろう。東京と九州では、発生に一ヶ月もの差がある。つまり九州では上陸が早いのである。日長時間は東京と変わらない。やはり水温か・・・・。
今日は、とても暖かく、日中の気温は19℃。21時の水温は16℃もあった。しかし、幼虫は這い回るものもいない。1匹も上からでは確認できない状態である。2個ばかりカワニナが食べられている。今まででは、投入した翌日には、すべてのカワニナに食らいついていたが、食べられずに這っているカワニナもいる。

2003年3月25日 ヒキガエルが這い出す

今日は暖かい春の雨である。今年もヒキガエルが這いだしてきた。我が家は住宅地の中であり、池もない。しかし、各家の庭からヒキガエルが路上に歩き出すのである。案の定、車にひかれるものが多い。
ベランダのブルーベリーの花芽も膨らんできた。赤いクランベリーの葉も少しずつ緑色になってきた。ようやく春が始まった。水槽の陸地部分に植えたハコベやクレソンは、土を覆い隠すように茂ってきた。土は、常に程良く湿った状態を保っている。
ゲンジボタルの幼虫には、まだ変化はない。カワニナの殻は4個取り除き、新たに4個投入。発光もせず、這い回ることもなく、皆、石の下でじっとしている。

2003年3月26日

最高気温が17度ほどになり、最低気温も10度になった本日は、勤め先の渋谷では桜がほころび始めた。ゲンジボタルの幼虫は、先日投入したカワニナ4個の内、1個しか食べられていない。上陸前にはほとんど食べなくなるが、その時期に来たのであろうか。

2003年3月27日 桜の開花

東京で桜が開花した。平年よりも1日早く、前年よりも11日遅い開花である。
昨日に引き続き、カワニナを食べていない。水温は21時の時点で17℃ある。全てのゲンジボタルの幼虫が、石等の下に隠れており、上から覗くだけでは発見できない。

2003年3月28日

上陸近くになると、ゲンジボタルの幼虫は夜間盛んに這い回り、よく発光するようになるものだが、今日現在では、夜22時になっても幼虫の姿はまったく確認できず、発光も確認できない。はたして60匹もの幼虫がすべて生きているのか不安になってくる。
ベランダでは、ラズベリーにも新芽が出てきた。ラベンダーはまだ冬葉のままだが、ローズマリーは花盛りである。季節の移り変わりを肌だけでなく、視覚的にも感じられるようになってきた。上陸が待ち遠しい・・・

2003年3月29日

ストック用のカワニナの元気がなくなってきた。這うことなく、蓋を半開きにして水底に転がっている。そういえば、水換えを2週間以上していなかった。すぐに新しい水(浄水器を通したもの)に変えてやると、途端に元気になった。水槽を掃除してみると、カワニナの稚貝が沢山生まれていた。今度、生息地に戻してやろう。
それから、ゲンジボタルの蛹観察用の装置を準備した。10cm四方の塩ビ製のものを用意し、側面の1つを切り取って、ラップに変え、用土を8〜9cmほど入れた。上陸してきた幼虫をこの中に入れて、後にラップをはずして少しずつ土を横から掘り出して「土まゆ」を取り出すためである。

2003年3月31日

3月も終わりである。勤め先の渋谷では桜が満開に近くなってきた。
このところカワニナを食べていなかったが、昨日、今日は食べており、今日は殻を3つ取り除き、新たに4個投入した。しかし、ゲンジボタルの幼虫は這い回ることなく、すべて石の下に隠れている。


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