ホタル百科事典/ホタルに関する質問

東京にそだつホタル

ホタルの光の秘密−ゆらぎと癒し−

ホタルの光を美しく感じるのはなぜでしょうか?

  ホタルが光っているのを見ると、とても美しく思います。何か秘密があるのでしょうか?

ホタルの光の秘密−揺らぎと癒し−

  私たち人間がホタルの光を美しく感じる理由は、いくつか挙げられます。

  1. ホタルは、儚い。光は美しいという先入観を持っている。
  2. 元来、人間は医学的に光ったり輝くものに対して興奮する。
  3. ホタルの光には、「1/fのゆらぎ」がある。

などが考えられますが、3の「1/fのゆらぎ」について簡単にご紹介します。

「ゆらぎ理論」とは

  宇宙全体の中にある無限種類(10の80乗個といわれている)の基本粒子の集合離散からなる、目に見えないミクロの世界を私たちの感覚で“変化するもの”としてとらえていこうというものです。玉川大学の佐治晴夫教授は「ゆらぎ」の考え方の基本は、変動する物理現象の中に見られる変動そのものを追いかけるのではない。例えば周波数のゆらぎと言えば、中心値のまわりで、周波数がどのように変化するか平均値からどのようにズレていくかを問題にする」「その周波数の「ゆらぎ」をじっと見ていると、その「ゆらぎ「の中に実際の振動そのもののからくりが映し出されてくるのが見えてくる」(ゆらぎの不思議な物語)と言っています。

「1/fゆらぎ」とは

  fとはフリクエンシー(frequency=周波数、振動数)の頭文字のfです。物理学では周波数や脳波に限らず、音、色、光などの変化をすべて波形のグラフに描くことができ、これを「フーリエ変換」した値を両対数グラフ(関数グラフの一種)に図示し、その分布を見ることで変化を読むことができます。このグラフでパワーレベル(P)を縦軸に、周波数(F)を横軸に比例関数的にとり、測定した値を点で表示して「ゆらぎ」を見ます。「1/fゆらぎ」を図示すると、周波数が低い部分のパワーレベルが高く、高い周波数部分(右寄り)ではパワーレベルが低いという逆比例(反比例)が観測されています。つまり、パワーが強く周波数の低い左上から、パワーが弱く周波数の高い右下へマイナス45度の角度の直線に沿って振動数が図示されます。このようにF(周波数)に対してパワーレベルが逆比例(反比例)するので1/fと表現され、「1/fゆらぎ」と呼ばれることになりました。この研究の歴史はまだ浅いこともあって一般的にはあまり普及していませんが、最初の発見は1925年、アメリカの研究者が真空管を流れる電子流の録音を測っている時に見つけたものです。電子を陰極から不規則に放するとポチッと出るショット・ノイズとは別に見い出されたフリッカー・ノイズと言われるものです。この雑音(ゆらぎ)は周波数が低いとパワーレベルが高く、周波数が高いと逆になるということで研究が始ったものです。

ゆらぎについてのグラフ

  「ゆらぎ」の中には1/fを示さないものもあります。周波数値がFに平行で一定のパワーレベルに集約されるものは「雑音」と言われ、やかましく耳障りな音や不快感を覚える色彩や苛立ちを覚える配列などがこれに当たります。もうひとつは“1/f二乗ゆらぎ”と呼ばれるもので、グラフ上では1/fよりも鋭い角度で右下に下る数値が生じます。まどろっこしくゆったりとし、リズム感が乏しく眠気を誘うような“ゆらぎ”で、砂丘の風紋は、ほぼこの形をしています。対象によって、完全にこの形をしているわけではなく、入り交じっったりはしていますが、基本として周波数が1/fのマイナス45度のラインに値が多く示されるのは、1/fにゆらいでいると言えるものです。
  人の体のリズムも「1/fゆらぎ」になっています。そのことから「1/fゆらぎ」が人に快適感を与えると考えられています。体のリズムと同じリズムである「1/fゆらぎ」の刺激を与えることにより、人は快適になれるのです。
(人体のゆらぎについては:生体のフラクタルゆらぎとその機能 http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~yamamoto/jres_6/jres_6.htmlが参考になります。)

「ホタルの光とゆらぎ」

  ゲンジボタルの発光現象をスペクトル解析すると、周波数が低い部分は1/fにゆらぎ、周波数が高い部分は1/f二乗にゆらいでいます。つまり、ホタルの光は、私たちの心を癒す効果のある可能性が高いと思われます。

ロウソクの炎の輝度のパワースペクトル図 ロウソクの炎の輝度のパワースペクトル図

ゲンジボタルの発光のパワースペクトル図 ゲンジボタルの発光のパワースペクトル図

パワースペクトルの計測について

  CCDカメラにより、発光体のあかりを画像情報としてパソコンのフレームメモリに取り込み、画素における赤,緑および青の各強度から輝度計算して、パワースペクトルを図示する。フレームメモリに取り込む画像情報のフレーム構成は、1フレームにおいて、縦48画素,横32画素とした配列fX,Yを設定する。フレームメモリの取り込み仕様は、1画素 fX,Y における赤,緑および青それぞれのあかるさの情報は、RGBの各色成分毎にrX,Y,gX,Y,bX,Yとして、6ビット階調の離散値 0〜63で表現される。1フレーム内の赤(R),緑(G)および青(B)のあかるさ(画素値)は、式(1)に示すように各画素における各色成分についての離散値を、それぞれ積分して求める。
 1フレーム当たりの輝度(K)は、各色成分の画素値の合の合計であり、式(2)から算出する。
     R=∫∫ rX,Y dxdy
     G=∫∫ gX,Y dxdy
     B=∫∫ bX,Y dxdy       ・・・(1)
    x:1〜32,y:1〜48
     K(フレーム輝度)=R+G+B   ・・・(2)  
  例えば、1024枚の各フレームについて、同様の計算を行うことで1024点の輝度データが得られる。66.6mm秒間隔で取り込んだ各フレームの時間軸における輝度データを、高速フーリエ変換(FFT)し、実軸成分と虚軸成分から光強度を算出する。そして縦軸に光強度、横軸に周波数をとり、両対数表現してパワースペクトル図に表示する。


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